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志望理由書・自己PRでAIをどこまで使っていいかの線引き

志望理由書や自己PRを書こうとして、真っ白な画面の前で手が止まる。そんなとき、生成AIに下書きを頼みたくなるのは自然なことです。使うこと自体は悪いことではありません。問題は、どこまで頼っていいのか、その線引きが分からないまま丸ごと任せてしまうことです。この記事では、AIを使ってよい場面と使わないほうがよい場面を分けて考え、実際にそのまま使える指示文も合わせて紹介します。

面接で聞かれたときに答えられない、が最大の落とし穴

総合型選抜や推薦入試の多くは、書類の提出だけで終わりません。面接があり、書類に書いた内容について深掘りする質問が飛んできます。就職活動の面接も同じです。ここで一番困るのは、AIが作った表現が達者すぎて、自分の口からその理由をうまく説明できない状態になることです。

たとえば「なぜその学部を選んだのですか」「その経験から何を学びましたか」と聞かれたとき、書類に書いた通りの言葉で答えられればよいのですが、AIが選んだ言い回しや構成をそのまま覚えていないと、話しているうちに書類の内容と少しずつずれていきます。面接官は、書類の内容と話している内容の整合性を見ています。ずれに気づかれると、書類全体の信頼性が疑われてしまいます。

書類と面接は別々の課題ではなく、一続きのものです。書類だけをきれいに仕上げても、面接で崩れてしまえば意味がありません。AIに文章を整えてもらうときも、常に「これを自分の言葉で話せるか」を基準に見直す必要があります。丸ごと書かせた文章が抱える一番の弱点は、文章としての完成度ではなく、この「本人が語れない」という一点にあります。

見られているのは文章のうまさではなく、経験と動機

志望理由書や自己PRで評価されているのは、整った文章を書く技術ではありません。この人がどんな経験をしてきて、何を考えて、なぜこの進路や仕事を選んだのか、という中身です。文章が多少ぎこちなくても、経験と動機が具体的に伝わってくる文章のほうが、読み手の印象に残ります。

AIは、与えられた情報をもとに文章を組み立てるのは得意ですが、あなたが実際に何を経験し、そのときに何を感じたかは知りません。エピソードそのものを思い出したり、そこから自分なりの考えを言葉にしたりする作業は、本人にしかできません。AIに志望動機そのものを考えさせてしまうと、経験の代わりに、どこかで見たような一般的な言い回しが並ぶことになります。読み手はそうした文章を数多く読んでいるので、実感のこもった具体性が欠けている文章には比較的気づきやすいものです。

だからこそ、AIに頼ってよい部分と、自分で埋めなければならない部分を分けて考えることが大切になります。次の節で、その線引きを整理します。

使ってよい場面・使わないほうがよい場面の判断基準

どこまでなら使ってよいか、場面ごとに整理すると次のようになります。

使い方判断理由
自分で書いた下書きを読ませて、分かりにくい箇所を指摘してもらう使ってよい文章は自分のものであり続ける。直すかどうかは自分で決められる
経験を思い出すための質問を出してもらう使ってよい経験そのものはAIが答えるのではなく、自分の記憶から引き出す作業になる
字数を削る、表現の重複を整理してもらう使ってよい内容の骨格は変わらない。最終判断は自分がする
敬体・常体などの表記のゆれを直してもらう使ってよい文章表現の技術的な調整であり、動機や経験の中身には触れない
志望動機そのものを考えてもらう使わないほうがよい「なぜ自分がそう思うのか」を自分の言葉で説明できなくなる
経験していないエピソードを作ってもらう使わないほうがよい面接で深掘りされたときに答えられず、事実と異なる内容になりかねない
完成文をまるごと出してもらう使わないほうがよい自分の言葉として語れなくなり、面接での受け答えと書類がずれる

共通しているのは、AIに任せるのは「すでに自分の中にあるものを整理する作業」までで、「まだ自分の中にないものを作る作業」は任せない、という線引きです。この基準で迷ったときは、その作業をAIにやらせた結果を、面接で聞かれても自分の言葉で説明できるかどうかを考えてみてください。説明できないと感じるなら、それはやりすぎのサインです。

そのまま使える指示文

実際にAIへ送る指示文の例を紹介します。書式ごとコピーして、自分の下書きに合わせて使ってください。どの指示文にも、条件をきちんと書き添えていることに注目してください。

下書きの分かりにくい箇所だけを指摘してほしいとき。

以下は志望理由書の下書きです。分かりにくい箇所や、話の流れが飛んでいるところだけを指摘してください。書き直しは提案せず、どこがどう伝わりにくいかだけを教えてください。

経験を思い出すための質問を出してほしいとき。

次のテーマについて、自分の経験を思い出すための質問を出してください。「いつ」「どんな状況で」「自分はどう考えて行動したか」「そこから何を学んだか」を、一つずつ順番に聞いてください。代わりに文章は作らず、質問だけにしてください。

字数を整えてほしいとき。

以下の文章を、意味と主張の骨格を変えずに、募集要項で指定された字数に収まるよう削ってください。削った文はすべて示し、どこを削ったか分かるようにしてください。

敬体・常体の統一や言葉の重複を確認してほしいとき。

以下の文章について、敬体と常体が混ざっている箇所と、同じ言葉を繰り返し使っている箇所だけを指摘してください。内容や構成には触れないでください。

どの指示文にも共通しているのは、「代わりに作らないで」「指摘だけして」という条件です。この条件を外すと、AIは親切に完成形を出してきます。それを受け取ってしまうと、線引きが崩れます。

貼り付けるときに一つだけ気をつけたいことがあります。志望理由書の下書きには、自分の氏名や在籍校のほか、部活の顧問や友人の名前、具体的な受賞歴など、個人が特定できる情報が含まれがちです。文章の分かりにくさを見てもらうだけなら、そうした固有名詞は「A先生」「B高校」のように伏せても指摘の質は落ちません。入力した内容がどう扱われるかはサービスや設定によって異なるので、使う前に一度そのサービスの説明を確認しておくと安心です。

手元のAIチャットで構いませんが、Geminiのようなツールに下書きを貼って、条件を守ってもらいながら試してみると進めやすいです。

学校・大学・企業ごとに方針が違うことを忘れない

生成AIの扱いについては、学校や大学、企業によって方針が異なります。使ってよい範囲を細かく示しているところもあれば、生成AIを使用して作成した文章の提出を認めていないところもあります。同じ受験生でも、志望先が変われば線引きも変わるということです。

この記事で挙げた判断基準は、あくまで一般的な考え方の目安です。募集要項や出願要項に生成AIの利用について記載がある場合は、必ずそちらが優先されます。記載を読まずに「たぶん大丈夫だろう」で進めるのではなく、出願前や応募前に募集要項をひととおり確認する習慣をつけてください。判断に迷う場合は、学校の先生や大学の窓口、企業の採用担当に、AIの利用範囲について直接尋ねるのも一つの方法です。

AIの言葉に引きずられたと感じたときの戻し方

AIに下書きを整えてもらっているうちに、「これは自分の言葉じゃない気がする」と感じることがあります。そのサインを無視せず、次のように戻してみてください。

まず、AIに直された後の文章をいったん脇に置き、自分がもともと書いた下書きや、最初にメモした箇条書きを読み返します。そこに書かれていた言葉づかいや、話の順番、間の取り方が、実はあなたらしさの土台になっていることが多いです。

次に、直された文章の中で「自分なら絶対にこう言わない」と感じる表現を探して、そこだけ自分の言葉に置き換えます。全部を書き直す必要はありません。違和感のある部分だけ直せば、文章全体の印象は自分のものに戻ります。

最後に、声に出して読んでみるのも有効です。読んでいて詰まる箇所や、言いにくい言い回しは、たいてい自分の言葉になっていない部分です。詰まらずに話せるかどうかは、そのまま面接に向けた確認にもなります。迷ったら、AIに整えてもらう前の自分の下書きに戻ることを、いちばんの基準にしてください。

まとめ

志望理由書や自己PRにAIを使うこと自体は、否定されるべきことではありません。下書きの分かりにくさを指摘してもらう、経験を思い出す質問を出してもらう、字数や表記を整えてもらう。こうした使い方は、自分の文章を良くする助けになります。

一方で、志望動機そのものを考えてもらったり、経験していないエピソードを作ってもらったり、完成文をまるごと出してもらったりすると、書類と自分の言葉が少しずつずれていきます。そのずれは、面接で表に出てしまうことがほとんどです。

AIに任せてよいのは、すでに自分の中にあるものを整理する作業まで。まだ自分の中にないものを作る作業は、自分の手で埋める。この線引きを持っておけば、AIを味方につけながら、自分の言葉で語れる書類を仕上げられます。志望先の募集要項に生成AIについての記載があれば、そちらを必ず優先してください。

参考リンク