第1章 生成AIの土台をつくる

なぜ間違えるのか、どこで気づけるのか

第3回 / 全10回 約7分

生成AIが事実でないことを、もっともらしい文章で述べる現象をハルシネーションと呼びます。今回は、これを「困った不具合」ではなく予測できる性質として扱えるようにします。

正しい答えと誤った答えは、同じ工程で作られる

ここが核心です。

生成AIの中では、正しい文を作るときと、誤った文を作るときで、やっていることが同じです。どちらも「次に来そうな言葉を選ぶ」の繰り返しでしかありません。

事実かどうかを判定する工程が、どこにも存在しない。

だから誤りは、たどたどしい文章では出てきません。正しい答えとまったく同じ、滑らかな日本語で出てきます。

文章の自然さは、内容が正しい証拠にはならない。

正しい答えと誤った答えが同じ経路で作られること 質問 次に来そうな語を 1つずつ選ぶ 正しい答え 事実でない答え 分かれ道に「事実かどうかを確かめる」工程はない。だから見分けがつかない
正しい答えも誤った答えも、同じ工程を通って出てくる

これが、この講座で一番覚えて帰ってほしい一文です。

誤りが出やすい場所には偏りがある

ハルシネーションは、どこにでも均等に現れるわけではありません。出やすい場所が決まっています。

出やすい場所なぜか
数字(金額・日付・件数)桁や数値の並びは、いくらでも「ありそうな形」を作れる
固有名詞(人名・社名・製品名)有名でないものほど、材料が少ない
出典(本・論文・URL)「それらしいタイトル」を作るのは簡単
細かい仕様・条文全体の傾向は掴めても、細部の材料は乏しい
新しい出来事そもそも材料を持っていない可能性がある

逆に出にくい場所もあります。一般的な説明、言い換え、文章の整形。これらは「それらしければ正しい」が成り立つ領域だからです。

つまり、前回の「正解が1つに決まるか」がここでも効いています。 同じ物差しです。

気づくための3つの手

誤りに気づく方法は、そう多くありません。現実的なのは次の3つです。

1. 出典を出させて、それを開く

「この情報の出典を教えてください」と聞いて、返ってきたURLや書名を実際に開いて確認します。 開かずに信じるなら、聞いた意味がありません。存在しないURLが返ってくることは珍しくありません。

2. 同じことを、別の聞き方でもう一度聞く

聞き方を変えて答えが変わる部分は、AIが確信を持っていない部分です。特に数字は、聞き直すと違う数字が出ることがあります。それが揺らぎのサインです。

3. 自分が知っている領域で試して、感覚を掴む

これが実は一番効きます。自分が詳しい分野について質問してみてください。 どの程度の粒度から怪しくなるか、その手触りが分かります。知らない分野だけで使っていると、この感覚が育ちません。

「AIを疑う」ではなく「確認先を持つ」

疑いながら使うのは疲れますし、続きません。現実的な構えはこうです。

つまり、全部を疑うのではなく、疑う場所を先に決めておく。これができていれば、生成AIは十分に信頼して使えます。

次回は、逆方向の話をします。AIが何を返すかではなく、こちらが何を渡してよいかです。

確認問題

  1. Q1生成AIの誤りが見抜きにくい最大の理由はどれですか。

  2. Q2ハルシネーションが比較的起きにくいのは、次のうちどれですか。

  3. Q3「出典を教えてください」と聞いたときの正しい使い方はどれですか。

確認問題に全問正解すると完了にできます