AIが書いた文章の直し方
ChatGPTやClaudeに文章の下書きを頼むと、それらしい文章はすぐに出てきます。ただ、読み返してみると「間違ってはいないけれど、このまま出すのはちょっと違う」と感じることがあります。どこが悪いのか言葉にしづらいまま、語尾を少し変えたり、接続詞を入れ替えたりして終わってしまう人も多いのではないでしょうか。
この記事では、その「なんか違う」を直せる形に分解し、どの順番で手を入れればよいかを整理します。先に断っておくと、ここでの目的は「AIっぽさを消して人が書いたように見せる」ことではありません。AIっぽいと感じる文章の多くは、単に読みにくいか中身が薄いだけです。直すべきなのはその読みにくさや薄さであって、結果として自然な文章になればそれでよい、という立場で書いています。
「なんか違う」の正体は、たいてい3つのどれか
「AIっぽい」という感覚は漠然としていますが、分解すると原因は驚くほど少ないパターンに収まります。ひとつは単調さです。どの段落も似た長さで、似た組み立てで進むと、内容が変わっても読んでいる感触が変わらず、読者は流し読みに入ってしまいます。ふたつめは抽象度の高さです。AIは学習した範囲の一般的な表現を組み合わせて文章を作るため、具体的な固有名詞や場面が抜け落ちやすく、誰にでも当てはまりそうな話が続きます。みっつめは密度の低さです。結論に入る前の前置きや、当たり前の一般論が長く、実質的な情報が少ないまま文字数だけが増えていきます。
この3つは別々の問題に見えて、実は根っこが同じです。AIは「それらしく間違いなく書く」ことは得意でも、「この文章で本当に言いたいことは何か」を選び取ることは苦手です。選ぶ作業を省くと、無難で汎用的な表現が並び、結果として単調・抽象的・低密度な文章になります。逆に言えば、直す作業とは「AIが選ばなかったものを、書き手が選び直す」作業だと考えると見通しが立ちます。
大事なのは、これらを「なんとなく気になる」で終わらせず、症状として名前を付けることです。名前が付けば、次にどの操作をすればよいかが決まります。単調さには段落の組み立てを変える、抽象度には具体例を足す、密度の低さには前置きを削る、というように、感覚の指摘を作業の指示に変換できるからです。次の章では、この変換をもう少し細かい症状レベルまで落とし込みます。
よくある症状と直し方
「なんか違う」をさらに具体的な症状に分けると、次のような対応関係になります。自分の文章がどれに当てはまるか、チェックしながら読んでみてください。
| 症状 | 何が起きているか | 直し方 |
|---|---|---|
| どの段落も同じ長さ・同じ組み立てで単調 | 「主張→理由→例」のような型を毎回律儀に繰り返している | 一部の段落は結論だけの一文にする、例だけ先に出すなど、型を意図的に崩す |
| 抽象的な言葉が多く、具体的な話が出てこない | 「効率化」「重要」「求められる」など、誰にでも当てはまる語で埋まっている | 抽象語を、自分の職場や状況での具体的な出来事に置き換える |
| 前置きや一般論が長く、結論になかなか入らない | 本題に入る前の断り書きが厚い、既知の前提を毎回説明し直している | 前置きを丸ごと削り、結論や本題から書き始める |
| 「〜することが重要です」のような、誰でも言える一文が並ぶ | 主張はあるが、なぜ・どう重要なのかの中身がない | その一文を削るか、根拠や具体例に置き換える。言い切れないなら削るほうが早い |
| 逆接や列挙の接続詞が多く、話が進んでいないのに進んだ気がする | 「しかし」「また」「一方で」が文をつなぐためだけに使われている | 接続詞を抜いて意味が通るか確認する。通るなら不要。通らないなら文の順序自体を見直す |
| 主語が曖昧で、誰が何をするのか分からない | 「〜が求められます」「〜する必要があります」のように行為者を隠す言い方が続く | 主語を「あなたが」「担当者が」のように具体的に補う |
この表のうち、上の3つ(単調・抽象・前置き)は文章全体の「骨組み」の問題で、下の3つ(空疎な一文・接続詞・曖昧な主語)は一文単位の「表現」の問題です。この順番には理由があります。骨組みを直さないまま一文ずつ直しても、単調で薄い文章がきれいな単調で薄い文章になるだけだからです。次の章で、この順番をもう少し具体的な手順として説明します。
直す順番: まず削る、次に具体を足す、最後に整える
AIが書いた文章に手を入れるとき、多くの人は語尾や言い回しから直し始めます。しかし、いきなり表現をいじると、直すたびに文章全体のバランスが崩れ、直しても直してもキリがない感覚に陥りがちです。おすすめの順番は逆で、削る→具体を足す→整えるの順です。
最初にやるのは「削る」です。前置き、一般論、当たり前の注意書き、結論の先延ばしになっている段落を落とします。これだけで文章の密度は目に見えて上がります。実際、直す作業のなかで一番効くのはこの工程です。書き足すよりも先に、要らないものを削るほうが、文章はずっと読みやすくなります。削って初めて、本当に言いたいことが何段落分あるのかが見えてきます。
次に「具体を足す」です。ここはAIには代われません。実際の業務で起きた場面、固有の事情、社内でしか通じない言い方、自分が判断に迷った経緯などは、書き手本人しか知らないからです。AIは一般的にありそうな例は出せても、あなたの状況そのものは知りません。削って空いたスペースに、この記事自体の書き方と同じように、抽象語を具体的な場面に置き換えていきます。
最後に「整える」です。骨組みと具体が固まったところで、初めて語尾や接続詞、文のリズムに手を入れます。ここまでの2段階を飛ばして表現だけ整えても、中身が変わらないので読後感はさほど変わりません。逆に、削ると足すが済んでいれば、整えは仕上げの一手間で済みます。
なお、AIに文章を書かせること自体は悪いことではありません。下書きを速く出せるのはAIの強みであり、そこから先の「選び、足し、整える」を担うのが書き手の役割だと考えると、役割分担として自然です。指示文の書き方を工夫すれば下書きの段階から質が上がりますが、それでも仕上げの直しは別の作業として必要になります。指示文の基本についてはAIへの指示文(プロンプト)の書き方基本ガイドで扱っているので、書かせ方から見直したい場合はそちらもあわせて読んでみてください。
直しと事実確認は別の工程
削って、具体を足して、整え終わったら、もうひとつ工程が残っています。事実確認です。文章の読みやすさを直す作業と、書かれている内容が正しいかを確かめる作業はまったく別のものなので、混ぜて同時にやろうとすると両方とも中途半端になります。
特にAIが書いた文章では、もっともらしい言い回しで、実は根拠のない数字や事例が混ざっていることがあります。文章として自然に読めることと、内容が事実であることは別の話です。AIがなぜそうした記述をしてしまうのかについては、AIはなぜもっともらしい嘘をつくのかで仕組みを説明していますので、あわせて確認しておくと、どこを疑うべきかの見当がつけやすくなります。事実確認は、直し終えた文章を最後にもう一度、内容の面から読み直す工程だと考えてください。
全部直すか、書き直すかの見極め
ここまでは「直す」前提で進めてきましたが、直すよりも書き直したほうが早いケースもあります。見極めのポイントは、骨組みそのものが目的とずれているかどうかです。
たとえば、社内向けの案内文が欲しかったのに、AIが一般的な広報文のような骨組みで書いてきた場合、一文ずつ直しても案内文らしくはなりません。骨組み自体が違うからです。こういうときは、直す時間を使って、最初から要点だけを自分の言葉で書き出したほうが早く仕上がります。逆に、骨組みは目的に合っていて、単調さや抽象度、前置きの長さといった表面的な症状だけが気になる場合は、この記事の順番で直していくのが向いています。
判断に迷ったら、次のどれかを試すと見えやすくなります。
- 一度時間を置いてから読み直す(書いた直後は違和感に気づきにくいため)
- 声に出して読んでみる(単調さや息継ぎの位置のおかしさは、目で追うより耳で気づきやすいため)
- 自分以外の人に読んでもらう(何がわかりにくいかを、書いた本人は判断しづらいため)
これらはどれも、直すか書き直すかを決めるための材料集めです。判断そのものを急ぐより、まず違和感の正体をはっきりさせることを優先してください。
直したあとの仕上げに使えるツール
ここまでの直しは、基本的に自分の目と手で行う作業です。ただ、記事やレポートのように、まとまった文章を継続して書いていく用途では、書いた文章を読み返して整える工程そのものを支援するツールを使うという選択肢もあります。文章の流れや言い回しのくどさを指摘してもらい、直す作業の下敷きにする、という使い方です。ツールごとに得意な範囲や使い方は異なるので、自分の書く量や用途に合うかどうかは公式サイトで確認してみてください。
チェックリスト
最後に、この記事の内容を見直すためのチェックリストをまとめます。直す前と直したあとで、それぞれ確認してみてください。
- 前置きや一般論から始まっていないか(結論・本題から書き始められているか)
- 段落の長さや組み立てが、最初から最後まで同じパターンになっていないか
- 「〜することが重要です」のような、誰でも言える一文がそのまま残っていないか
- 抽象的な言葉の後ろに、具体的な場面や自分の状況が書かれているか
- 接続詞を抜いても文の意味が通るところはないか
- 主語を省いたまま「〜が求められます」のような言い方になっていないか
- 直したのは表現だけで、骨組み自体は目的とずれたままになっていないか
- 内容の事実確認を、文章の直しとは別の工程としてやったか
まとめ
AIが書いた文章に感じる「なんか違う」は、単調さ・抽象度の高さ・密度の低さという、名前の付けられる症状に分解できます。直すときは、いきなり語尾や言い回しをいじるのではなく、まず削り、次に具体を足し、最後に整えるという順番を守ると、手戻りが少なく済みます。中でも一番効くのは削る作業で、前置きと一般論を落とすだけで文章の密度は上がります。具体を足せるのは書き手だけであり、そこにこそ手をかける価値があります。そして、直し終えたら事実確認は必ず別工程として行ってください。この記事で扱ったのは、あくまで文章を読みやすく、中身のあるものにするための直し方です。AIらしさを検出から隠すための書き換えではない、という点を最後にもう一度確認しておきます。